ミチビキ

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 映画館に付いたが半分ほどたっていたらしくチケットだけ購入し、近くのハンバーガー店で買ったハンバーガーとポテトを日陰の強い公園で広げ一緒に食べる。コイツは熱過ぎるものは苦手らしく、冷めるまであまり食べようとしなかった。  その様子は食べ物を冷ましている子どものようで思わず口もとが緩んだ。  映画の時間となり、ポップコーンとジュースと水を購入し席に座る。リュックから出してやると直ぐに俺のジュースカップがカタカタと揺れ確認したときには水分を飲み干されていた。  俺の膝の上に座り上映が始まるのを待つ。客が増えていくがコイツに反応する者は誰一人現れない。どうやら俺だけらしい。 「大きい。」「すごい。」「頑張れ。」  コイツは映画で何か起こるたびに叫び、足をバタバタと動かす。他の人には見えず聞こえないようだがうっとおしさは感じるらしく前後左右からの人からの視線や咳払いが気まずかった。今度、また観に来よう。  他のもみたいといっているため、他の作品も3本ほどみた。前もって言い聞かせたためこれらの作品はそれなりに観ることが出来た。小さくリアクションを押さえるコイツが微笑ましかった。 「あー、流石に疲れたな。それにもう夕方か。」 「夕方。早く帰る。早く。」  夕方という言葉に反応したのか急に背中で暴れだした。しきりに背中を蹴ってくるのが痛い。 「どうした。何をそんなに暴れてんだ。」 「早く早く早く早く。」 「分かった、分かったから大人しくしててくれ。」 「早く早く早く早く。」  コイツに言われるがままに帰路を急ぐ。アパートに着いた頃はとっくに日が暮れていた。アパートの敷地内に入るや否やリュックから飛び出し庭のほうへ掛けていく。 「おい、どこ行くんだ。」  慌てて追いかけると切り株の上に座り込むのが確認できる。が、みるみる輪郭が崩れ、切り株と同じ大きさの円柱に変形する。
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