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「おい、一体何してんだ。おい。返事しろ。」
いくら呼びかけても返事じがない。なんとも言いようが無い怒りが溢れる。そして思わず叫んだ、
「なんなんだよ。」
霊相手に何言ってるんだ。
「いきなり押しかけてきて。」
馬鹿か、やっぱり無理だったんだ。
「一緒に食事して、映画観て。」
意思疎通なんか始めから無かったんだ。
「たった、一日でも、お前と過ごせて、いつもと違って、楽しかったのに。」
気がついたら膝を着いていた。どのくらいいたのだろう顔は目から顎にかけてカピカピに乾いている。涙が落ちて湿っているはずの土も既に乾いている。ただただそこにいただけ。そしてアイツは俺には。
また悔しくてたまらなくなったが周りが妙に明るい気がした。回りをみるとぼんやりとした何が周りに無数にいるのだそして切り株のあった場所は輝く木が立っていた。
その木が光輝くとそれらはゆっくり上へ飛びながら霧散していく。
「ありがとう。」
アイツの声だ。呼びかけようとするが声が出ない。そのままアイツは語りかけてくる。
「僕はいつもこの日はお参りの無かった人のために帰り道を教えていたんだ。でも切られてしまった。それからまた案内をするために食べ物やいろんな人から少しずつ精気を貰っていたんだけど、いつの間にか人がいなくなって、自分分だけで精一杯になって帰り道を教えることが出来なくなった。昨日、目を覚ました時、今度もダメかもしれないと思った。」
悲しそうに語るアイツ。でも急に元気になり始めた。
「でも君がいてくれた。少しでも力をくれないかなと思ったら食べ物
もくれたし沢山の人がいるところに連れて行ってくれた。おかげで今回は道案内が出来た。」
木が、アイツが上から霧散していく。俺にも何か言わせろ。この金縛りを解け。
「これが1つ目。もう1つは、映画ありがとう。いつも一人だったから、一緒に何かするのがとても楽しかった。そして、楽しかったと言ってくれた。これで僕は次の機会まで気持ちよく眠れるよ。また、会えるといいね。……さようなら。」
木の幹の部分が一気に霧散し小さな球体が切り株の中に入っていった。
「馬鹿か。一人で言って満足しやがって。」
「また、来年な。」
俺は切り株を撫でた。
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