二度目のプロポーズ

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そうですか、あなたにとって息抜きできる場所は居酒屋なんですか、うちではなくて。 でもね、あなたは疲れてるって言いますけどね、主婦だって大変なのよ。 掃除洗濯炊事なんかをね、ひっきりなしにこなして、それで最近始めたパートに行ってね…あなたに掃除や洗濯なんてできるの? あなたは会社員のほうが偉いみたいに言いますけどね。 だいたいいつもじゃなくてもいいのよ、結婚記念日とか節目に帰ってきさえしてくれれば。 結婚記念日の今日を忘れて、妻に謝るふりしながら自己弁護? あなたは何様よ?どうせ口うるさいなとか手がつけられないとか、思ってるんでしょ? もういいわよ。 こういうときのあいつの、人を最早逃げ場が無い所まで追い込む能力は天下一品だ。 完膚なきまでに叩きのめされ、心のうちのどこかにはあったであろう自分を優位に置こうとする姿勢を指摘され、プライドをぼろぼろに傷つけられた俺はついついあの一言を口に出してしまったのだ。 「そんなに文句があるなら出てけ」 あいつはしばらく、驚いた顔で口をぱくぱくさせ、その後真っ赤になって、 「あー出てくわよ!あなたの顔なんかもう二度と見たくないわ!」 というとさっさと荷物をまとめ、玄関の扉を大きな音を立てて閉めて、出て行ってしまったのである。
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