1人が本棚に入れています
本棚に追加
「…………………帰ります」
土曜日。
天気に恵まれ、雲ひとつない真っ青な空が頭上に広がっている。
「か、帰らないでよ真宮くーん」
見慣れた我が家の前には、私服姿の私と真宮くん。
帰ろうとする真宮くんの背中を、私が必死で食い止める。
「……ほんと、何をどうしたらこうなるんだよ…」
信じられない、と首を振る真宮くんに愛想笑いを返して、私はもう一度事の顛末を説明した。
▼▽▼
今からちょうど五日前、ママに出張が決まった。
元々忙しい人だったから、私は特に気にしなかった。
ただそれも、期間を聞くまでの話。
『え、三ヶ月?』
『うん、ごめんね青葉。どーしても私が行かなきゃ駄目って言われちゃったのよ』
三ヶ月だ。三ヶ月の間、私にプチ独り暮らしをしろと、この母親は言っているのだ。
『ママ、私の家庭科の成績知ってるよね?!』
『貴方が中学の頃から万年1なのはわかってるわ。三ヶ月も一人にしたら家がどうなるかも、想像がつくもの』
『だったら』
『でもねぇ、こればっかりはどうしようもないのよ。三ヶ月間、とにかく火事だけは起こさないようにね。お金はちゃんと振り込んでおくから、時々百合ちゃんとかにお掃除を頼みなさい』
そう言ってママは、当面の生活費を置いて、無情にも出張に行ってしまった。
▼▽▼
「ああ、可哀想な春山青葉!!」
「家庭科万年1って、もはやちょっとした才能ですよね」
最初のコメントを投稿しよう!