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敵……確認。この部屋の中に、確実にヤツがいる。
ドクドクと脈を打つ心臓を落ち着かせ、右手で持ったスチール缶に力を込めた。
一発だ。一発で、仕留めてやる。
足の踏み場も無い程に散らかった部屋を、忍び足で進む。
散乱したビニール袋を踏んでしまった。
乾いた音が鳴り、思わず息を呑む。
意識を集中させ、室内を見渡した。
目では見えないが、陰にヤツがいるのはわかっている。
足をもう一歩踏み出した時、視界の端で何かが動いた。
反射的に振り返りノズルを敵へと向ける。
額に垂れる汗が尋常じゃない。
心臓の音はますます大きくなり、深呼吸をしてから目を見開いた。
意を決して歩みを進める。
今夜の安眠のために。
安らかな食事のために。
ヤツは、ヤツだけは排除しなければ。
黒いナニカが見えた瞬間、私は握りしめていた缶のボタンを思いきり押した。
吹き出される白いガス。
しかしそれより先に――――
「えっ?ちょ、ま、いや、やああああいあああああいああいあいあああ!!」
――――ヤツが飛んで向かってきた。
叫び声をあげながらゴキ〇ェットを噴射すること数分。
永遠にも思えた戦いは、お巡りさんの訪問で幕を閉じたのだった。
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