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「何?通報されてたって事?」
お弁当の卵焼きを飲み込んでから、向かいに座った百合が尋ねてきた。
私は購買で買った焼きそばパンをかじりつつ答える。
「そー。事情説明しても信じてくれないしさ、大変だったんだよ」
「まあ確かに、青葉ん家ただのゴミ屋敷だもんね」
変に思われてもしょうがない、とウィンナーを口に入れたまま言われ、私は少し視線を落とした。
「だって、家事とか出来ないんだもん」
唇を尖らせたままパンを口に運び、言い訳のように呟く。
百合が呆れて吐いたため息が、私の髪先を掠めた。
「それはアンタが悪い。今どきの女子高生、ご飯くらいは作れなきゃ」
「だってー、」
「だっても何もないの。このままだとお母さんが帰ってくるまでの三ヶ月で、青葉死ぬよ?」
昨日出たゴキ〇リが脳裏によみがえり、背筋が粟立つ。
家が汚すぎて死んだなんて、不名誉にも程がある!
「…ねぇ百合、片付け手伝っ……」
「嫌に決まってるでしょ」
最後まで言い切る前に、百合の鋭い却下が私の心をザクリと刺した。
真っ赤なプチトマトを美味しそうに食べる百合を見ながら、私は息をもらす。
冗談抜きで、あの部屋にこのまま居たら危険だろう。
かと言って、一人で解決できるレベルの生活力も無ければ家事能力も無いのだ。
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