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「はあ……どうしたものか」
「どうしたもこうしたも無くて、とりあえず片付ければいいんじゃない」
はふ、と満足そうに弁当箱を閉じた百合が、無情にも正論を言う。
もうそろそろテレビの取材が来てもおかしくない程汚れた我が家を思い出して、私は首を振った。
「それが出来たら苦労しないんだってば」
「青葉の生活力の低さには、アタシもお手上げだわ」
白い掌をひらひらと振りながら、百合が肩をすくめる。
そして思い出したようにスマホを取り出した。
黒い液晶に自分を映し、前髪をいじる。
「アンタはそもそも、女子力がないのよ。それはもう絶望的なまでに」
「……そりゃあまあ、百合に比べたらね」
手入れの行き届いた黒髪といい、ニキビひとつ無い白い頬といい、百合は誰がどう見ても『女子』である。
それに比べて私はどうか。
ドライヤーなんて高校入ってしたことないし、毎朝寝癖を直さず学校に行く。
基本完璧の百合と違い、料理も掃除もできない。鞄の中はいつもぐちゃぐちゃ、たまに自分で自分が女子かわからなくなる程だ。
「青葉はさあ、」
艶のある髪の毛を払い、百合がこちらを真っ直ぐ見据える。
「折角の素材を無駄にしてんのよ」
「素材?」
「そ。その女子力の欠如っぷりを補える位可愛い顔してんのに、勿体ないわあ」
物憂げに息を吐く百合を見つめると、調子乗るんじゃないわよと釘を刺された。
流石姐さん、私を良い気分にはしてくれないらしい。
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