命の危機です、真宮くん。

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お昼終了のチャイムが鳴って、百合が前を向いた。 5限目は体育だ。休み時間の間に着替えないと。 「青葉、行こ」 体操服を手に取って立ち上がると、百合と一緒に教室を後にした。 私達の通う柏木高校は、近所じゃそこそこ有名な学校だ。 自由な校風と綺麗な校舎が人気で、毎年ちょっとずつ倍率が上がっているらしい。 そんな柏木高校には、普通科と特進科がある。 一般的な入試で入れる普通科と、学業に秀でた生徒だけを集めた特進科だ。 今年は一年生に『十年に一人の天才』が現れたらしく、普通科でも話題になったりした。 私は普通科だが、特進科に憧れている先輩がいたりする。 陸上部の松島先輩である。 普通科と特進科は校舎から分けられていて、普段接点なんてものはない。 だから、放課後教室から見えるグラウンドだけが私と先輩の唯一の接点だった。 接点といったって私が一方的に見ているだけなのだけども。 因みにこの特進科、特別教室だけは普通科と一緒だ。 二つの科のちょうど中央に特別教室は集められている。 そして更衣室はその並びだ。 つまりは……。 「青葉?何立ち止まってんの」 「あー、百合ごめん。忘れ物したから先行ってて!」 「また?はいはい急ぎなね」 百合が背を向けたのと同時に、私はUターンして階段に向かった。
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