命の危機です、真宮くん。

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松島先輩のクラス、科学の授業だったりしないかなという淡い期待を込めて、二階に上がる。 しかしそこには誰も居らず、がらんとした廊下が続いているだけだった。 運が良いときは特進科の人に会えるのだけど、難しいものだ。 「……戻るか」 百合を待たせているし、体育にも遅れてしまう。 落胆を隠さずもと来た道を戻ろうとした時、何やら良い匂いがした。 焼き菓子のような、甘い香りだ。 食欲を物凄い勢いで刺激してくる。 花の蜜に吸い寄せられる蝶々のように、私はふらふらと匂いの元を辿った。 「調理室?」 電気のついたその教室は、この時期使われていない筈だ。 普通科も特進科も、調理実習はまだ先の話だ(成績に直結するので、時期は覚えていた)。 なのに何故、昼休みに甘い匂いが? もしかしたら先生が何かしているのかも知れないと思い、耳をドアに当てる。 中から足音。声は聞こえないから、一人なんだろう。 気づかれないように、そっと扉を開けた。 中に居る人物は、私に背を向けている。気づかれてはいない。 男子生徒のようだ。制服の上からエプロンを付けて、何か作っている。ドアを開けると一層匂いが強くなったが、彼はどうやらケーキを作っているみたいだ。
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