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そのあまりの手際の良さにまた見いってしまっていると、彼はつかの間の笑顔から一転、むすっとした表情になる。
「男が料理してんのが、そんなに珍しいですか」
「え?ううん。こんな綺麗に出来るなんて凄いなって思って」
私の言葉に美少年(仮)の眉間に皺が寄った。
また何か変な事を言ってしまったのか。
だけど私にとって、今は目の前のケーキの方が重要だった。
先ほどから必死に聞こえないフリをしているお腹によるブーイングも、ちょっともう誤魔化せない。
「あのさ」
ぐきゅー、という間の抜けた音にまけないよう、私は声を張った。
まだ何かあるのかとでも言いたげな視線を向けられても、怯まない。
「そのケーキ、少しくれない?」
「………別に良いですけど」
「ほんと?!やったあ!!」
思ったよりもあっさり許可が出て、歓喜の声が口をついて出た。
もし「嫌です」と言われたら、『泣き落とし』『渾身の一発ギャグを見せる』『裸踊り』『校内放送で頂戴と懇願する』あたりをやろうと思っていたのだけど、嬉しい誤算だ。
美しくデコレーションされたシンプルなショートケーキ。
私はフォークを手に取って満面の笑みを浮かべた。
「いっただっきまーす!!」
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