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「やったか!?」
「手応えはあった!」
柚菜は地面に倒れたままの誠にそう返し、貫いたものの正体を確かめようとする。
「これ……蛇?」
それは、形だけは蛇。
だが、それはまるで、黒い影が蛇を型どっただけのようで――
(間違いないわ、この蛇、妖……!)
そう確信した瞬間――蛇の姿は霧散した。
柚菜は驚きに目を見張る。
慌てて辺りを見渡すが、自分たちの他には何もいなかった。
(逃げた……というより、消えた……。力の強い妖怪だった訳じゃないみたいね。)
「無事、だな。」
無事で当然というような口調で言って、誠は起き上がって着物についた土を払う。
柚菜も立ち上がり、二又の尾を揺らして頷いた。
「私は何とも。誠は?」
「柚菜に突き飛ばされた時に打った額が痛い。」
「何ともないってことね。」
「おいこら。」
誠は軽く柚菜の額をこつんと叩く。
その手は、すぐに柚菜の白い耳に触れた。
「にしても、こっちの姿は久々だな。」
「まあ、あんまり本性を現す機会が無かったからね。」
――柚菜は、猫又の血をひく半妖である。
普段は人と変わらない姿をしているが、身体能力は人間とは比べものにならないほど高く、本性を現すと、白の耳と二又の尾が現れる。
人間ではないこの姿を、誠は笑顔で見つめてくる。
そこに嫌悪や恐怖などは、欠片もない。
「相変わらずすごいな。やっぱり柚菜は頼りになる。」
「別に大したことはしてないわ。」
柚菜はそう肩を竦めてみせるが、向けられる言葉はただただ嬉しい。
それを隠しきれなくて、尾が優雅に揺れた。
「ん? 何か嬉しかった?」
それを誠は目敏く見つけ、途端に柚菜は直立不動になる。
「は!? な、何言ってんの!! べ、別に私は……!」
そう言って、耳と尾を引っ込めようとする。
だが、急に誠に抱き締められた。
「にゃっ!?」
「待て、動くな。」
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