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「青い空に、白い雲。そして穏やかな小鳥達のさえずり。とても気持ちのいい朝だ。早起きは三文の徳と言うけど、こんな朝を迎えられるなら早起きというのも悪くないな。」
「……待ち合わせ時間に二時間以上遅れた奴の台詞だとは、到底思えないわね。」
冷ややかな言葉に、三条誠(さんじょうまこと)はめげる様子もなく、爽やかに笑った。
「遅れるって連絡はちゃんとした。責められる謂れはない!」
「連絡してきたのは待ち合わせ時間の一時間後。その連絡ですぐに行くと言っときながら、それからまた一時間たってやっと来たことを、忘れたとは言わせないわよ。」
「え、何のこと?」
「この……」
悪びれもせずにさらりと言われ、宮波柚菜(くなみゆな)は目を釣り上げる。
思いっきり怒鳴ってやりたかったが、どうせ不毛なことだと、深い深いため息をついた。
短い髪を振り、十六歳にしては小柄な体で、柚菜は目の前にいる誠の涼しげな顔を見上げた。
唇をとがらせると、大人びた顔つきが若干幼く見える。
「遅れた理由は?」
「いつも通り。」
「……寝坊ね。」
「それと、柚菜に連絡したあとでバスに乗ろうと思ったら、一時間に一本しかないバスが出た直後だった。」
「ほんっとうに運が悪いわね!」
「いやほんと、俺もびっくり。」
「もう!」
あまりに軽い言葉に、柚菜はつり目をさらにつり上げ、誠を睨み付けた。
「しっかりしてよ! 仕事なんでしょ!!」
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