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「ん? 読んだのか?」
「っ!!」
すると誠と目が合ってしまい、柚菜は肩を揺らして息を飲んだ。
「え、あ、そ、その、読んだ、読んだわよ!!」
身の内にわきあがった思いを押し隠すように、焦ってそう言う。
実際は流し読み程度しかしていないが、そう言うしかなかった。
「ん? 何かおかしなことでもあったか?」
誠は不思議そうに首を傾げる。
それに柚菜は全力で首を振った。
「う、ううん、別にそういうのじゃないから!」
「なら……いいが……。」
そう言って、誠は苦笑した。
「お前って、時々そんな風に変になるよな。」
「な、何それ……!」
「本当のことだろー。幼馴染みだからな。お前のことはよく知ってるに決まってるだろ。」
その言葉に他意は無い。そう自分に言い聞かせるが、胸が高鳴るのはどうしようもなかった。
(仕方ないじゃない……。好きなんだから……。)
誠と柚菜は幼い頃からの付き合いだ。
だが、誠は自分で言うほど、柚菜のことを分かっているとは思えない。
互いの性格はよく知っている。
しかし、柚菜が誠をどう思っているのかは――
(気づいてるはず、ないよね……。)
何だか恨めしくなってきて、柚菜はじっとりとした視線を誠に向けた。
しかし誠はそれには気付くことなく、腕を組んで話を進める。
「異変が起きたのは三ヶ月前。山に入った男が一人、いつまでたっても帰ってこない。九蛇山は全然危険な山じゃないから、遭難するはずもない。不審に思って家族は探しに行き……その家族も帰ってこなかった。そしてその噂を聞いた怖いもの知らずが面白半分で山に入り……やはり帰ってこない。その中に、いいとこのお坊ちゃんがいてな。」
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