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「その親が、誠……退魔師に依頼をしたっていう流れ?」
やっと落ち着いた柚菜が問うと、誠はのほほんと笑った。
「そーゆーこと。」
――誠は、退魔師である。
この世の中には、妖という、人間とは異なる生き物が存在している。
その妖たちはひっそりと暮らしているが、中には人に害をなす者もいる。
そんな妖たちの事件を解決するのが、退魔師たる誠の役目だ。
「ま、当然だよな。こんな怪奇現象、ただの人間にどうにかできるもんじゃない。」
「ま、そうね。……で、私を呼んだのは?」
「いつも通り、手伝ってもらおうと思って。」
誠は楽しそうに言い、柚菜はため息をついた。
「いつもいつもそうやって……私だって忙しいんだからね。」
「いつもそう言いながら助けてくれる柚菜が、俺は大好きだよ。」
「はあっ!?」
あまりに気負いなくそう言われ、柚菜は目を剥いた。
(ま、まさか本気でため息をついた訳じゃないのに気付かれた……?)
必死で動揺を顔に出すまいとするが、誠の方はと言えば、にこにこと笑っている。
……気付いたような様子は……ない。
どうやら、いつも通り、深い意味のない言葉だったらしい。
そのことに、安心したような、なぜ気づかないのかと不満に思うような……。
とりあえず、柚菜はため息をついた。
「で、手伝ってくれるよね。」
「それは……。」
「ちなみに、無事に連れ戻したらかなりの額の報酬金が出……」
「やるわ。」
「いつもながら、素晴らしいほどの即答だねぇ。」
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