3人が本棚に入れています
本棚に追加
そして現在。
「さあ、行くわよ。報酬金よ報酬金! たんまりもらうためにさっさと解決するわよ!!」
二人は、帰らずの山と呼ばれる、件の山に登ろうとしていた。
「ったく、昔っから守銭奴なのは変わらないなぁ。」
「私の勝手よ。」
柚菜はつっけんどんに言い、さっさと歩いていく。
その後ろを、誠はゆったりとした足取りで追う。
彼は今日も着流し姿だ。
だがそれは昨日よりも薄い色合いである。
この色も、誠によく似合っている。
柚菜は肩越しに誠を見た。
「これって、やっぱり神隠しってやつ?」
「何とも言えないな。単なる神隠しなら連れ戻しゃいい話だが……もし妖に食われでもしてたら。」
「どうしようもないわね。」
柚菜が眉を寄せて言うと、誠は困ったように頭を掻いた。
「ま、そうではないことを願っておこう。……それにしても、いつもいつも本当にありがと。助かってるよ。」
「今更お礼なんて言われてもね。昔っからだもん。もう慣れてるわ。」
「柚菜は頼りになるな。」
そうやって、頼りにされることが、笑顔を向けられることが、名を呼ばれることが。
(すごく嬉しいなんて、誠は気付かないんだろうな……。)
優しく笑う大好きな人に、柚菜は赤らんだ顔をそっと背けた。
最初のコメントを投稿しよう!