あなたは私の好きな人

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 そして現在。 「さあ、行くわよ。報酬金よ報酬金! たんまりもらうためにさっさと解決するわよ!!」  二人は、帰らずの山と呼ばれる、件の山に登ろうとしていた。 「ったく、昔っから守銭奴なのは変わらないなぁ。」 「私の勝手よ。」  柚菜はつっけんどんに言い、さっさと歩いていく。  その後ろを、誠はゆったりとした足取りで追う。  彼は今日も着流し姿だ。  だがそれは昨日よりも薄い色合いである。  この色も、誠によく似合っている。  柚菜は肩越しに誠を見た。 「これって、やっぱり神隠しってやつ?」 「何とも言えないな。単なる神隠しなら連れ戻しゃいい話だが……もし妖に食われでもしてたら。」 「どうしようもないわね。」  柚菜が眉を寄せて言うと、誠は困ったように頭を掻いた。 「ま、そうではないことを願っておこう。……それにしても、いつもいつも本当にありがと。助かってるよ。」  「今更お礼なんて言われてもね。昔っからだもん。もう慣れてるわ。」 「柚菜は頼りになるな。」  そうやって、頼りにされることが、笑顔を向けられることが、名を呼ばれることが。 (すごく嬉しいなんて、誠は気付かないんだろうな……。)  優しく笑う大好きな人に、柚菜は赤らんだ顔をそっと背けた。
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