あなたは私の好きな人

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***  幼い頃からずっと一緒にいた彼。  一緒にいるのが当然で、彼のことを知るたびに心が浮き立ち、いつの間にか大好きになっていた。  いい所も悪い所も、全部好き。  だが、時々、この男はこのままで本当に大丈夫なのかと、本気で思ってしまうこともある。 「ぜぇ……ぜぇ……はぁ……。」 「大丈夫?」 「くそぅ、山登りなめてたぜ……。」  山を登り始めてわずか数分。  誠は既に荒い息をしていた。 「ぜぇぜぇ……まさか、ここまでとはな……。」 「まだそんなたいした距離登ってないわよ。」 「つぅ……。自分の体力値の低さに泣けてくるぜ……。」  誠はかなり体力がない。  それは生来のもので、退魔師の修業をしていてやっと今の状態らしい。 「ないものねだっても仕方ないでしょ。しかも、ちゃんと準備して来ないのも悪いわ。服装ぐらいは山登りに適したものにしなさいよ。」  呆れる柚菜は長いズボンに薄手のシャツ。  背中に背負ったリュックには色々入っている。  それに引き換え、和服の誠。  おまけに、履いているのは下駄だ。  手荷物などないし、山を登るのにふさわしいとは思えない。 「いいんだよ、これは俺のトレードマークなんだ。簡単には変えられないな。」 「それでばてばてになっちゃ、世話ないわよ。……はい。」  柚菜はすっと手を差し出した。  内心は少し緊張しているが、それを表には出さない。  誠は小さく唸ると、その手を取った。 「ここは普通逆だろー……。男が女に手を引かれるって……。」 「文句言わないの。体力無い誠が悪い。」
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