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握った手に、嬉しさと気恥ずかしさを感じるが、柚菜は誠の手を引いて歩き出す。
「にしても、やっぱ柚菜は体力とかちゃんとあるんだなー……。軽くしょっく……」
「誠が無さすぎるだけ。ていうかそもそも、私は普通の人間とは違うし。」
――柚菜は、人間ではない。
いや、正しくは、半分しか人間ではない。
もう半分は――妖怪だ。
半分ずつの存在。
だから柚菜は、そのどちらでもない。
「でも、柚菜は柚菜だよ。」
もやもやとした気分になりかけた柚菜だが、のんびりとした誠の言葉に目を瞬く。
誠は優しい顔で柚菜を見ていた。
「人間でも妖怪でもない半端者。柚菜はそう気にしてるみたいだけど、柚菜は柚菜だよ。」
「……誠は、昔からいつもそう言うよね。」
柚菜は自然と微笑んだ。
何だか嬉しくてくすぐったくて。
柚菜は誠の手をつかんだまま急に走り出した。
「え、ちょ、柚菜!?」
「走らないとこけるよ!!」
戸惑う誠に一声叫び、柚菜は更にスピードを上げる。
「柚菜っ待て待て待て! こける、まじこける! 俺の体力は既に限界近くて! ていうかこんな斜面走るの危ないから!」
「全然危なくないわよ!」
「俺は危ないの!!」
誠の叫びを無視し、木の根を飛び越える。
「うわっ!!」
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