あなたは私の好きな人

9/26
前へ
/58ページ
次へ
「きゃあっ!!」  今まで引っ張っていた手を逆に強く引っ張られ、柚菜は奇声を発して、誠と一緒に地面に倒れ込んだ。 「に~、何やってんのよ!」 「いっつぅ……。だから俺言ったのに……。」 「バカバカバカ!!」 「いやいや、人の話聞かないお前が悪い! てか、俺の言うことわざと無視してたろ!」  誠は地面に寝転んだまま、軽く柚菜の頭を小突いた。  柚菜は頬をふくらませる。  ――その時、突然何かの咆哮のようなものが響き、二人は飛び起きた。 「何っ!?」 「これは……!」  警戒する二人。  そこに、何かが襲い掛かる。 「誠伏せて!!」 「どわっ!!」  柚菜は誠を突き飛ばし、自分は強く地面を蹴った。  小さな身体が、自分の背丈の倍以上の高さにまで飛ぶ。  そこで体勢を立て直した柚菜は、すっと目を閉じた。  ――次の瞬間、柚菜の黒い髪の中から、一対の白い耳が現れる。  同時に、同じく白の二又の尾も姿を見せた。  そのどちらも、猫のそれに似ている。  柚菜が右手を構えると、その手の爪がすっと伸びる。  構えた右手で、柚菜は着地と同時に、襲って来たものを貫いた。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加