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とんとん、と仲の良いクラスメートの肩を叩いて。 「?」 「ちょっと首絞めてくれない?」 振り向いたと同時に、俺は笑顔でそう言った。 グーで殴られた。 「グーは痛いよ…」 「うっさい!アンタ頭大丈夫なの?」 大丈夫じゃない自信しかない。 彼女は俺の前で仁王立ちをし、俺は正座。さすがに教室の床は足が痛い。 「で。何がどうしたらそうなるのよ」 嫌そうに聞く彼女に、俺はおずおずと返答する。 「首絞められたら、楽しいかなって」 それを聞いた彼女は一瞬驚いた顔をして、すぐさま呆れた顔をした。 心なしか彼女の気配が怖いような…。 「それは、想像?」 「どっちかと言えば結論?かな」 「はぁ?」 引き気味なのがひしひしと伝わってくる。 それでも聞く彼女は、さすが長年クラスメートをやっているとでも言うべきか。 「何、絞めたの?」 「うん」 察しが良くて助かる。 そもそも何故彼女にあんなことを頼んだかと言えば、自分じゃ怖くて絞められないからだ。 事実、昨夜、自分で自分の首を絞めていたのだが、途中で頭がガンガンして手を離してしまったのだ。 多分、あの辺が俺自身の限界なんだろう。 …などということを、包み隠さず掻い摘んで彼女に暴露した。 「何が楽しいの?」 「何かが楽しいんだ」 いくら暴露したって、彼女は最終的にこれしか聞かない。 首を絞めた時の、目眩とか強い頭痛とか口がわななくとことか、そんなことを言おうが、彼女はいつもああ聞く。 俺は自分の手を首に当てる。このままギュッとやったって、その内離すか、彼女に殴られるだけだ。 「痛くないの?」 「どちらかと言えば、苦しいかな」 だからこそ、楽しいんだけど。 そう笑ったら、パーで頬をビンタされた。しかも往復。
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