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撮影時
足元を確認。大丈夫。
結び目確認。大丈夫。
周囲を確認。大丈夫。
首に縄をかけて、「よし」と意気込んだ。
自宅だし、辺りに人はいない。
首回りは緩くもなく、きつくもなく。
足元にはしっかりしてない、ぐらついた椅子。
とりあえずスイッチも入っていて、準備万端だ。
今日は絶好の首吊り日和だと思うんだ。
あ、思わない?
まあ環境さえ整ってれば、日和も何もないんだけどね。
このまま足元の椅子を蹴れば、見事に首吊り死体が一つ増えるんだけど…。せっかくだし、話をしてからにしようか。
死刑囚の戯れ言だと思って、気軽に聞いてよ。
これから死ぬ訳なんだけど、どう足掻いても自殺になるよね。
首吊り他殺なんて、なかなか聞かないよ。そういう点では、我ながらポピュラーな死に方を選んだと思うよ。
普通なら、というかよくある話なら、遺書とか書いて理由とか述べるんだろうけど、あいにく遺書も何も書いていない。遺言書みたいなのもない。
なんでかって聞かれても、答えは出てるよね?
必要ないからね。うん。
さて、そろそろ向こうも待ってるだろうし、一思いに死ぬとするかな。
というわけで以上、一時間後のキミへのメッセージでした。
大好きだったけど、付いて来ちゃあ駄目だからね?
それじゃ、バイバーイ。
そう言ってデジカメに向かって手を振って、足元の椅子を蹴った。
レンズは、キミの大好きな人の隣を映していた。
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