眠れない

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眠れない

眠るのが辛くなったのはいつからだろうか。いやまあ、そんな深刻な話じゃないんだけど。 ひどく夢見が悪い。そんな一言で片付けられるくらい、些細な理由なんだ。自分にとっては、些細じゃ済まなかった訳なんだが。 電気の明暗とか、枕とか、友人からもらった快眠グッズとかも、色々試してはみた。けれど、どれも決定的な解決には至らなかった。 ということで、絶賛寝不足中です。 「眠いぃ…」 「今日も?アレ、駄目だった?」 「駄目。一時間すら保たなかった」 快眠グッズを色々くれる友人が、難しい顔をして唸る。アロマとかオルゴールとか、手当たり次第に試してくれるのはありがたいんだが、事実眠れないんだ。 「やっぱ、根本的解決を図るのが、一番手堅いんじゃないかな」 「けどなぁ…」 「夢とか、覚えてない?少しでも手がかりがあれば…多少はなんとか…」 友人はそう言いつつ、鞄から袋を取り出す。何かと問えば人形と言われた。一応、今日の分も用意してくれていたらしい。 「夢、なぁ…」 無い訳じゃないけど。 微妙な顔でもしてたのか、友人が心配そうに顔を覗き込んできた。 「なんとなくでもいいんだけど。ほら、深層心理の現れとか言うし」 「………黄緑色」 「え?」 「だから、黄緑色。それだけはいつも見るんだ」 見たもの、に入るかどうか微妙なとこだが、友人は考え込むようにして、喋らなくなってしまった。 黄緑色。いや、正確には、黄緑色に染まった何か。物の形をしてはいるんだが、なにぶん見た記憶がない。ただ、ある、という認識しかできないのだ。 ものすごい気持ち悪いのは、確かだけど。 「黄緑…いや、でもなぁ…」 友人がボソボソと何かを言っている。なんなんだ、言うならハッキリ言えばいいのに。 そう、言えば…。 「…放課後、カラオケ行こうぜ」 「は?いやいいけど…」 寝不足の奴にカラオケとか、何の苦行だよ。友人に、全部奢らせてやろうか。 黄緑色の何かは、今日も夢に出る。 俺はそれを見る度に、飛び起きる。 友人からもらった人形を片手に。
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