0人が本棚に入れています
本棚に追加
眠れない
眠るのが辛くなったのはいつからだろうか。いやまあ、そんな深刻な話じゃないんだけど。
ひどく夢見が悪い。そんな一言で片付けられるくらい、些細な理由なんだ。自分にとっては、些細じゃ済まなかった訳なんだが。
電気の明暗とか、枕とか、友人からもらった快眠グッズとかも、色々試してはみた。けれど、どれも決定的な解決には至らなかった。
ということで、絶賛寝不足中です。
「眠いぃ…」
「今日も?アレ、駄目だった?」
「駄目。一時間すら保たなかった」
快眠グッズを色々くれる友人が、難しい顔をして唸る。アロマとかオルゴールとか、手当たり次第に試してくれるのはありがたいんだが、事実眠れないんだ。
「やっぱ、根本的解決を図るのが、一番手堅いんじゃないかな」
「けどなぁ…」
「夢とか、覚えてない?少しでも手がかりがあれば…多少はなんとか…」
友人はそう言いつつ、鞄から袋を取り出す。何かと問えば人形と言われた。一応、今日の分も用意してくれていたらしい。
「夢、なぁ…」
無い訳じゃないけど。
微妙な顔でもしてたのか、友人が心配そうに顔を覗き込んできた。
「なんとなくでもいいんだけど。ほら、深層心理の現れとか言うし」
「………黄緑色」
「え?」
「だから、黄緑色。それだけはいつも見るんだ」
見たもの、に入るかどうか微妙なとこだが、友人は考え込むようにして、喋らなくなってしまった。
黄緑色。いや、正確には、黄緑色に染まった何か。物の形をしてはいるんだが、なにぶん見た記憶がない。ただ、ある、という認識しかできないのだ。
ものすごい気持ち悪いのは、確かだけど。
「黄緑…いや、でもなぁ…」
友人がボソボソと何かを言っている。なんなんだ、言うならハッキリ言えばいいのに。
そう、言えば…。
「…放課後、カラオケ行こうぜ」
「は?いやいいけど…」
寝不足の奴にカラオケとか、何の苦行だよ。友人に、全部奢らせてやろうか。
黄緑色の何かは、今日も夢に出る。
俺はそれを見る度に、飛び起きる。
友人からもらった人形を片手に。
最初のコメントを投稿しよう!