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××した
包丁、マッチ、ハサミ、ヤスリ、カッター、フォーク、金槌、スプーン。
「お、おい…?」
ナイフ、日本刀、ノコギリ、ロープ、縫い針、砥石、斧、ビン、鎖、チェーンソー。
種類豊富な危険物の数々に、俺は冷や汗が止まらないまま、目の前でニッコニッコしてる彼女を見る。
「さぁっ、好きなのを選んでっ?」
それで××してあげるから!…などと、物凄く良い笑顔でのたまう彼女。
正直に言おう、逃げたい。拘束されてるから無理だけど。
「ねっ、ねっ。どれがいい?私のオススメはビンかなっ」
「じゃあビンは却下」
「ええーっ」
そう言いながらも、渋々ビンを片付ける彼女。その要求は通るのかよ。
「じゃあじゃあ、マッチ?今なら油もつけちゃうよっ」
「却下」
「ちぇーっ」
残念そうにマッチと油(しかもサラダ油)を片付ける。何がしたいんだ彼女は。
そう思いながら、拘束されている手足をどうにかして自由にできないかと、縄抜けを試みた。やったことなかったから拘束は外れなかった。
「じゃあフォー「なあ」ク…どうしたのっ?」
「なんでこんなことするんだ?」
俺の質問に、彼女はこてんと首を傾げ、至極可笑しそうに笑った。
「なんでって、私言ったじゃない。あなたを××したいからっ!」
「フォークをこっちに向けるな!」
「これも却下?」
「却下!」
俺が叫ぶと、彼女は悲しそうに笑った。悲しそう、というか、哀れんだように?
《ブォン》と、不気味な音が大きく鳴る。何の音かと思えば、目の前で彼女がチェーンソー…を…。
「おいっ!ちょっと待てそれは止めろ!」
チェーンソーを持ちながらこっちを向く彼女に、俺は必死に叫ぶ。
「却下だ!それも却下!」
「ねっ。仏の顔も三度まで、って知ってる?」
「…はっ…?」
彼女はチェーンソーを大切そうに見つめて、俺を見て、微笑んだ。
そのままチェーンソーを振り上げ、ピタッと止まる。
「私の提案を三回、却下したんだから、四回目の却下は私が却下してもいいよね?」
「…ちょっ…おい…!」
「大丈夫。私はあなたを××したいだけだから」
そうして、彼女はそれを振り下ろした。
「××したい、××したい、××し…たい…。××してよぉ…!」
「あは…もう、××せないんだね…」
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