俺と親友『胡散』

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俺と親友『胡散』

ある日の昼休み。 昼飯を完食し、携帯をいじって暇を潰す俺。そんな俺の目の前で、未だに弁当を頬張る親友。お前それ三つ目だろ、なんで平然と食ってるんだよ。 「は、ほうひへば」 「飲み込んでから喋れ」 言葉にならない言葉を発してきたので、そう注意する。もぐもぐもぐ、とリスもびっくりな咀嚼をし、とうとう三つ目の弁当を完食しやがった。 「んむ…。そういえば!」 「日本語勉強してから喋れ」 「これ日本語!」 分かってるよ。俺だって伊達に日本人やってない。 「で、何?」 「お前が中断したくせにー」 「そうだ辞書借りてこようかな…」 小さく呟いて席を立ったら、親友が泣きそうな顔で俺の腕を両手で掴む。泣かなくても、っていうか泣くなよ、目立つだろ。 「待って!喋らせてください、お願いします、辞書なら俺が貸すから!」 お、やりぃ。 貸してくれると言うので、俺は席に座り直す。たったそれだけで、親友は嬉しそうな顔をする。こいつ、ちょろい。 「で?」 「いやさぁ、『胡散臭い』の『胡散』ってなんだと思う?」 「辞書引けよ」 いけね、思わず本音が漏れた。だが親友は俺の発言を聞いて、目から鱗とでも言うように、辞書を素早く引いていた。 どうやらそんな方法も思い付いていなかったようだ。 「おぉ……お?」 辞書を引きながら百面相をする親友は、クラスでも浮いた存在となっていて、そんなのと親友な俺まで浮いて…久々に親友止めたいと思った。 どうだったんだ?と聞けば、親友はわざわざ辞書を掻い摘んで教えてくれた。 「胡散は、昔の香辛料の一種で、当時はどちらかと言えば、今で言う麻薬とかの扱いだったらしい。麻薬は当時でもヤバいものだったし、そんなのの臭いをさせてる奴は当然怪しい奴。だから胡散臭いってのは、怪しい様子って意味らしい」 「ほぅ…」 「しかもこの胡散、その麻薬とかの事件で、種や苗木は全部根絶やしにされて絶滅してて、今じゃ幻の香辛料となっている……って胡散臭っ!」 まさに胡散だな。 「さて。じゃあ辞書貸して」 「あ、おう」 親友の手からひょいと辞書を抜き取って、俺はそのまま、次の授業の教室へと向かう。 廊下を歩いていると、昼休み終了のチャイムと同時に、悲痛な叫びを発する親友の声が聞こえた。
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