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……当日。12月28日。
いつもは穂積さんが迎えに来るデート。でも今日は私が電車で穂積さんちの最寄り駅まで向かうことになっている。電車の中は高校生や中学生、冬休みだから平均年齢は低め。私も彼女たち混じり、電車の吊革に掴まる。暖房が利いていて暑くて、コートを脱ぎたいけれど、左手には大きめトート。お泊まりセットが入っている。汗をかいたら汗臭いと思われそうで。でもシャワーを浴びるからいいのか、と自分を宥めたり。穂積さんちの浴室で裸になる自分を想像して赤面する。
駅に着くと穂積さんは車で迎えに来ていた。
「こんにちは」
「ああ。大丈夫か? その荷物」
「泊まるのにいろいろと」
「いろいろ?」
「タオルとか化粧品とかパジャマとか」
「女はいろいろとあるからな。パジャマなら俺んちに置いとけばいい」
「置い……」
そんな言葉を聞いて私はまた一気に赤面した。置いとくって、つまりは、また泊まりに来い、ということで。穂積さんは軽々とトートを持ち上げて後部座席に乗せた。私は助手席に回り、ドアを開けた。そろりと乗り込む。
「で、今日は何する?」
「な、ナニするって……」
「時間もあるし、DVDでも見るか? それともケーキでも手作りするか?」
「ケーキ?」
「オーブンはないから、ホットケーキかクレープ焼いて重ねるぐらいしか出来ないけど」
「穂積さん、そんなことするんですか?」
「いや……」
「……」
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