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潰れたミカン箱から散乱した衣類を新しい段ボールに移させると、俺は段ボール類は管理人室の前に置かせ、新入生を管理人室へ入らせた。
「あ…ありがとうございました」
自信なさげな顔で俺を見上げてから頭を下げる。
「ああ、いいから。ほら、ここにでも座ってな」
ギィギィといつも座れば軋むオンボロ回転事務椅子だが、今はこんな椅子でも間に合う。
「名前は?」
「か…春日…正盛…」
「カスガ…マサモリ君…と」
俺はメモに名前を書き、管理人室の糸電話の口を開ける。
「寮長…おーい、聞こえるか?」
『……はいな、聞こえておますぅ』
今の寮長は、人望や性格もさることながら、我が国の陸上競技ハンマー投げ選手に全てにおいて見た目がそっくりだ。
彼の厚い胸板と、太い腕でガッチリ締め付けられたいと言うファンもかなりいるらしい。
しかし、その逞しすぎる見た目とは裏腹に、
「新入生、一人来てるぞ」
『ええ?もう?それは弱りおしたなあ…まだ最終確認残っておますのや。わてもすぐには動けまへん』
なんちゃって京言葉をあやつり、柔らかな物腰の男だ。
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