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『言い難おますけど…タイシはん、ちぃーと、そちらでかめしまへんやろか…』
年の離れた従兄が俺と同窓生だったため、彼から聞いたのか俺のことを渾名で呼ぶ。
「了解。じゃあ時間まで管理人室で待たせておくから、急げよ~」
『へえ~、タイシはん…よろしゅうに…』
『やれやれ…』と紙コップを置いた俺に『あの…』と春日が声をかけた。
「ここってやはり、厳しいですか?」
「ああ。他所は知らねえよ。だけど、かなり厳しいと思う。毎日血を吐くくらいにな」
ビビらせてやるつもりで、事実をありのままに伝えた。
すると、春日は『へえ~…』と言ったかと思うと、面白く楽しみで仕方ないと言いたげなキラキラ輝かせた目をし、負けん気の強そうな口元を薄く開いた。
「楽しみッス♪」
期待に胸膨らませる少年の顔そのままで、明るい顔で語る。
(若いって羨ましいな…)
まぶしくも見える笑顔を見ながら、夢も希望も破れた俺にとっては、羨ましい気持ちでしかなかった。
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