1022人が本棚に入れています
本棚に追加
最後の客が帰った。
と言っても、カウンターにはミキが残っていたが。
俺は、店を閉める準備をし始めた。
無言だった。
それでも、不思議と居心地は悪くなかった。
最後のグラスを洗い終わり、グラスをふいていると、ようやくミキが口を開いた。
「俺、前、本気だって言ったよね?」
俺は、視線だけをミキに向けた。
今日はじめて、ミキと視線が合った。
少し震えてる。
なんだ。やっぱりワンコのままじゃないか。
緊張してただけか。
俺は安心のあまり思わず微笑んでしまった。
「バカにしてる?」
ムッとしながらミキが言ってきたので、
「いや。」
とだけ答えておいた。
「マスター、前、誰かにふられたんだろ?マスターをふるぐらいなんだから、相当すごいヤツだろ?
だから、俺、我慢したんだ。
それに、俺、あのままだったら、力ずくでマスターに襲い掛かりそうだったし。」
力ずく?こんなワンコみたいな目をして?おもしれー。
最初のコメントを投稿しよう!