番外編---マスターの内緒話

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最後の客が帰った。 と言っても、カウンターにはミキが残っていたが。 俺は、店を閉める準備をし始めた。 無言だった。 それでも、不思議と居心地は悪くなかった。 最後のグラスを洗い終わり、グラスをふいていると、ようやくミキが口を開いた。 「俺、前、本気だって言ったよね?」 俺は、視線だけをミキに向けた。 今日はじめて、ミキと視線が合った。 少し震えてる。 なんだ。やっぱりワンコのままじゃないか。 緊張してただけか。 俺は安心のあまり思わず微笑んでしまった。 「バカにしてる?」 ムッとしながらミキが言ってきたので、 「いや。」 とだけ答えておいた。 「マスター、前、誰かにふられたんだろ?マスターをふるぐらいなんだから、相当すごいヤツだろ? だから、俺、我慢したんだ。 それに、俺、あのままだったら、力ずくでマスターに襲い掛かりそうだったし。」 力ずく?こんなワンコみたいな目をして?おもしれー。
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