先輩、優しくしないで。

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「せっ、先輩!せんぱい……っ!」 「ん?」 人の波間を縫って、先輩の背中に追いつく。 キュッと、制服の裾をつかんで引き止める。 先輩が首だけで振り向き、あたしを見る。 ……覚えてますように! 「あれっ、莉々ちゃん。同じ車両に乗ってたんだ?」 覚えてくれてる! しかも、笑ってくれた。 あたしだけに向けられた表情。 幸せ……。 「おはようございます。かのう……じゃなくて、和真先輩……」 「おはよーっ。朝から会えて、なんかラッキー」 「っ……」 そんなのは、あたしのセリフなわけで。 にぱって笑顔が可愛くて、それだけで胸がいっぱい。 「今日、昨日と髪型違うんだ?」 「は、はい……。ちょっと暑かったから、ハーフアップに……」 「それ、そういう名前なんだ?可愛いね」 髪の毛を結んでいるシュシュを、ポンポン撫でられる。 なにこれ、夢? 一生覚めなくても、文句言わない……。
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