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「せっ、せんぱ……」
「おい、おっさん!俺の女になにしてんだよ!」
先輩は、ひとりのスーツ姿の男の手をつかみ、叫ぶ。
周りの視線が、一気にこちらに集まってくる。
「なに……?」
「あれよ、痴漢じゃない?」
「ああ、あの女の子が……」
ひそひそ話が耳に刺さって、全てが自分のことを言われているように感じて、かあっと顔が熱くなる。
「あっ!待てこのやろ」
隙をついて、男が手を振りほどいて逃げ出す。
追いかけようとした先輩の体に抱きついて、あたしは引き止めた。
「っ、先輩……!大丈夫……だから……」
涙があふれる。
全身の震えは、先輩に伝わってしまっただろうか。
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