先輩、さよなら。

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あたしたちの会話を、聞いていないようで聞いていた美玖が、再びコミックスから目を覗かせる。 「……莉々さぁー、今日、彼氏に告るんだってさー」 「!?みっ、美玖!」 なぜ、それを今!? 「告……、え?」 遥くんの口元が引きつっている。 「えと、うん、そうなの……、今まで好きって言ったことなかったのね。……もう、美玖!」 美玖は、ささっとコミックスで頭をすっぽり隠した。 「本宮……」 美玖に言ったときと同じ。変な空気。 「あの、大丈夫……だから」 強がり半分で笑うと、 「別に、大丈夫じゃなくていいし……」 「え?」 何かを言われたはずなのに、声が小さくて、よく聞こえなかった。 「なに?遥くん、今なにか……」 「……」 だけど、聞き返しても、どうしても言い直しはしてくれなかった。
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