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先輩はうつむいて、何も喋らなくなってしまった。
遥くんが現われなかったら、あたしに何を言おうとしていたんだろう。
遥くんは、先輩を睨むように見たあと、あたしの手を引いた。
「行こ、本宮」
「あっ……」
先輩につかまれていた手は、するりと簡単に解けてしまった。
「せんぱい……」
遥くんが歩くのが速いから、あたしは小走りになる形で、ついていく。
「待って、遥くん!」
力が出ない。
熱い手に強くつかまれて、遥くんのなすがまま。
時折後ろを振り返っても、先輩はずっとうつむいている。
先輩、もうこれで……さよならですか?
「っ……、先輩!」
それでも、先輩はあたしの顔を見てくれない。
あたしは、もう振り返るのをやめた。
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