先輩、あのね。

31/41
前へ
/371ページ
次へ
「聞いたんだから!先輩は……っ、あたしが先輩を好きだと……困るって!」 目の前にいるのは今の先輩なのに、あたしの脳裏にはずっとあの日の先輩が存在している。 忘れたい。 忘れられない。 だから、離れることを決めたのに。 「なんで、そのことを……」 「直樹さんと話してたの、聞いたんです……」 先輩は、目を細め、苦い顔をする。 その表情は、あの言葉に偽りはなかったのだと言われているようで、ますます胸を苦しくさせた。 「これ以上、泣かせるつもりですか?」 「っ!」 それまで黙っていた遥くんが、あたしの腕を奪う。 先輩は油断していたのか、また手と手が離ればなれ。 「俺なら、こんなに不安にさせない」 転びそうになりながら、力の入っていないあたしは、遥くんに引っ張られていく。
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7895人が本棚に入れています
本棚に追加