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「聞いたんだから!先輩は……っ、あたしが先輩を好きだと……困るって!」
目の前にいるのは今の先輩なのに、あたしの脳裏にはずっとあの日の先輩が存在している。
忘れたい。
忘れられない。
だから、離れることを決めたのに。
「なんで、そのことを……」
「直樹さんと話してたの、聞いたんです……」
先輩は、目を細め、苦い顔をする。
その表情は、あの言葉に偽りはなかったのだと言われているようで、ますます胸を苦しくさせた。
「これ以上、泣かせるつもりですか?」
「っ!」
それまで黙っていた遥くんが、あたしの腕を奪う。
先輩は油断していたのか、また手と手が離ればなれ。
「俺なら、こんなに不安にさせない」
転びそうになりながら、力の入っていないあたしは、遥くんに引っ張られていく。
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