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「莉々……っ」
先輩の、惜しむような声が聞こえる。
だけど、追い掛ける靴音なんて、聞こえない。
先輩……。
あたしに、何を言おうとしたんだろう。
頭が熱くて、遮ってしまった言葉。
――聞かないと、ずっと後悔してしまう気がする。
「遥くん……っ、遥くん!待って!あたしは……――」
握られている腕を、もう片方で押さえる。
その時、
「莉々ー!!」
背中で、先輩があたしの名前を叫んだ。
近所の家にまでも響き渡るほどの声量に、反射的に振り返る。
「ちゃんと話聞け!」
突然のことに、遥くんも、強引に引っ張っていくことはしなかった。
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