先輩、嘘つき。

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あたしは今日も、登校してすぐに、階段を上がる。 3年生の教室がある、校舎3階まで。 今日こそ言うんだ。 先輩に。 伝えるんだ……。 人気(ひとけ)がない早朝の廊下を、1歩1歩確かめるように進んで。 見上げる教室のプレート。 3年3組。 中の声が聞こえる。 男子の先輩。 学年がひとつ違うだけで、いきなり敷居が高く感じてしまう。 深呼吸のために大きく息を吸い込んで…… 「ほら、早く行けよ」 「分かってるっつーの。押すなよ」 先輩の声が、より一層大きく聞こえて、扉が開いた。 目が合って、驚いたのは、きっとあたしよりも先輩の方で。 一瞬困ったような表情の後、 「……好きです!付き合って下さい!」 吸い込んだ息を吐き忘れたあたしに、先輩が告白をした。 「…………ハイ」 本宮莉々(もとみや りり)、17歳。 いきなりですが、好きな人が彼氏になりました。
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