先輩、嘘つき。

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靴を履いて、先輩と隣同士に歩く。 「……」 「……」 会話、ゼロ。 何かを話さなきゃと、口を開くけれど、何も思いつかない。 つまんない子だと思われる……。 「あー、えーと、君……さぁ」 何分かの沈黙をやぶり、先輩が無理に明るい声を作る。 「あ……、名前、呼び捨てでいいです……」 「な、名前?」 先輩の口元がひきつる。 やっぱり……。 意地悪するつもりではなかったのだけど。 「莉々って、呼んで下さい。叶先輩」 「お、オッケー。いきなり呼び捨てとか緊張するよな。俺も、下の……和真(かずま)でいいよ」 「……和真先輩……」 「まー、“先輩”もいらないけど、いっか」 先輩は、自分から告白をしたはずのあたしの名前を知らない。 いいんだ、分かってたから。
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