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その一人が、アドルファスであることは言うまでもない。
ただ、今の人界にそんな話は伝わっていない。
それを信じる根拠は、どこにもない。
だが、この世界に異変が起こっている事は、間違いのない事だろう。
「天使では私が、魔族ではカーマインの友人でシリウスという魔族が王となった。
従う者に従属の契約をし、逆らう者は力づくで縛った。
それは、カーマインも同じだ。
奴は、いくつもあった国家を統一した」
「人界で初めてであり、唯一の統一国家樹立ですね」
アドルファスが頷く。
「それぞれの界を隔てる、天界の門と魔界の門を作り、それに二界の王を鍵として封じた。それぞれの世界の往来がないよう、長い封印の時代だった」
「カーマイン王は、どうしたのですか?」
ユーリスが問う。
歴史によれば、カーマイン王は突如その姿を消している。
統一王国を樹立した。その一文から先がないのだ。
アドルファスは、静かな目でユーリスを見た後で、瞳を伏せる。
ほんの僅かな、黙祷のようだった。
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