第2章

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 その一人が、アドルファスであることは言うまでもない。  ただ、今の人界にそんな話は伝わっていない。  それを信じる根拠は、どこにもない。  だが、この世界に異変が起こっている事は、間違いのない事だろう。 「天使では私が、魔族ではカーマインの友人でシリウスという魔族が王となった。 従う者に従属の契約をし、逆らう者は力づくで縛った。 それは、カーマインも同じだ。 奴は、いくつもあった国家を統一した」 「人界で初めてであり、唯一の統一国家樹立ですね」  アドルファスが頷く。 「それぞれの界を隔てる、天界の門と魔界の門を作り、それに二界の王を鍵として封じた。それぞれの世界の往来がないよう、長い封印の時代だった」 「カーマイン王は、どうしたのですか?」  ユーリスが問う。  歴史によれば、カーマイン王は突如その姿を消している。  統一王国を樹立した。その一文から先がないのだ。  アドルファスは、静かな目でユーリスを見た後で、瞳を伏せる。  ほんの僅かな、黙祷のようだった。
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