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こればかりは、推測でしかないのだとアドルファスは言う。
ただ、魔界の壁が薄くなっているのは確かなのだそうだ。
天使たる彼には、見えるのだと。
「魔物は人の負の力に引きずられる。
戦が怒り、人が死に、恨みや憎しみが蔓延する。すると、柱の傷から小さな魔物がこちらにくる。
そうして少しずつ、傷が慢性化して行き来する道のようになってしまう」
「塞ぐ方法はありますか?」
「柱を形成する遺跡に行き、地道に修復することだな。
ただし、この遺跡に入るには光魔法の使い手がいなければ扉が開かない。
柱を形成するのは、光魔法だからな」
アドルファスのいう事に、ユーリスは深く頷く。
そして、まだ困惑しているコンラッドに向き直り、丁寧な礼を一つした。
「陛下、私がその遺跡へ行きます」
「ユーリス!」
ユーリスの申し出に、コンラッドは眉根を寄せる。
「許可できない」と言う声が、聞こえてきそうな顔だ。
だが、ユーリスも制止を聞くつもりはなかった。何よりこの天使がユーリスを選んだ理由が、分かったのだ。
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