第2章

23/29
前へ
/41ページ
次へ
 こればかりは、推測でしかないのだとアドルファスは言う。  ただ、魔界の壁が薄くなっているのは確かなのだそうだ。  天使たる彼には、見えるのだと。 「魔物は人の負の力に引きずられる。 戦が怒り、人が死に、恨みや憎しみが蔓延する。すると、柱の傷から小さな魔物がこちらにくる。 そうして少しずつ、傷が慢性化して行き来する道のようになってしまう」 「塞ぐ方法はありますか?」 「柱を形成する遺跡に行き、地道に修復することだな。 ただし、この遺跡に入るには光魔法の使い手がいなければ扉が開かない。 柱を形成するのは、光魔法だからな」  アドルファスのいう事に、ユーリスは深く頷く。  そして、まだ困惑しているコンラッドに向き直り、丁寧な礼を一つした。 「陛下、私がその遺跡へ行きます」 「ユーリス!」  ユーリスの申し出に、コンラッドは眉根を寄せる。  「許可できない」と言う声が、聞こえてきそうな顔だ。  だが、ユーリスも制止を聞くつもりはなかった。何よりこの天使がユーリスを選んだ理由が、分かったのだ。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加