第2章

26/29
前へ
/41ページ
次へ
「どこまで、私の話を疑問に思っているのかな、主殿?」 「内容は推測できません。ですが、話し忘れている事があるのではありませんか」  責めるではないユーリスの声音に、アドルファスはこれまでにない雰囲気を感じて首を傾げる。  僅かだが、空気が穏やかになっている。 「魔界との壁を薄くする原因は、他にもあるかもしれない」  ユーリスの予想通りの答えだった。  何かを隠している。この男の話しぶりからはそれを感じなかった。  だが、ユーリスは見ているのだ。  あの日、複数種族の魔物が統制のとれた動きでこちらに迫ってきたのを。  あれは、軍隊と同じだった。 「柱の力が弱っているのは、間違いがないだろう。 だが、それを加速させている者がいる」 「加速させている、者?」  急速に、心臓の音が早まった。  嫌な予感が当たる前、こんな感覚に陥る。  僅かに、手の平に汗をかくのが分かった。 「人が…魔界へ何かの干渉をしているのですか?」  何かを知った人間が、魔界へと干渉する。  それが原因で、この世界が歪み始めてしまったのか。  肯定するように、アドルファスは頷いた。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加