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「どこまで、私の話を疑問に思っているのかな、主殿?」
「内容は推測できません。ですが、話し忘れている事があるのではありませんか」
責めるではないユーリスの声音に、アドルファスはこれまでにない雰囲気を感じて首を傾げる。
僅かだが、空気が穏やかになっている。
「魔界との壁を薄くする原因は、他にもあるかもしれない」
ユーリスの予想通りの答えだった。
何かを隠している。この男の話しぶりからはそれを感じなかった。
だが、ユーリスは見ているのだ。
あの日、複数種族の魔物が統制のとれた動きでこちらに迫ってきたのを。
あれは、軍隊と同じだった。
「柱の力が弱っているのは、間違いがないだろう。
だが、それを加速させている者がいる」
「加速させている、者?」
急速に、心臓の音が早まった。
嫌な予感が当たる前、こんな感覚に陥る。
僅かに、手の平に汗をかくのが分かった。
「人が…魔界へ何かの干渉をしているのですか?」
何かを知った人間が、魔界へと干渉する。
それが原因で、この世界が歪み始めてしまったのか。
肯定するように、アドルファスは頷いた。
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