18人が本棚に入れています
本棚に追加
「何者かが召喚の術を使って、魔物をこちらに引き入れて可能性がある。
そんな事をすれば、壁に傷がつくからな。
その傷が広がり続ければ」
「壁が消え、魔物がこちらで好き放題に暴れる?」
「人間は滅ぶかもしれないな」
恐ろしい想像に、ユーリスは席を立つ。
そして、怖いくらいの冷たい目をした。
「阻止、します」
「そのつもりだ」
「…私はそいつらをおびき寄せる、餌ですね」
ユーリスが、静かに言う言葉を、アドルファスは否定しない。
だが、ユーリスもその事に動揺したり、怒りを見せたりはしなかった。
ただ静かに、アドルファスの傍まで歩みを進めた。
「構いません、それで」
「なに?」
「必要なら、私の命はどう使っても構いません。
その代り、この国と、私の大切な人を護る力と、知識を貸してください」
静かに、アドルファスはユーリスを見る。
何の淀みもない、真っ直ぐな緑色の瞳。
腹が立つ、澄み切った愚行。
最初のコメントを投稿しよう!