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ユーリスの瞳を、灰銀色の瞳が睨む。綺麗な顔に憎しみが見える。
そんな、愛憎混じるような表情をするとは、ユーリスは思いもよらなかった。
「私がお前に腹立たしさを覚えた理由が、今分かった。
その自己犠牲の精神と、己の愚行を疑わない辺りが、あいつに似ていたのか」
「あいつ?」
それが示す人物を、ユーリスはアドルファスの中に一人しか見出せない。
創世の王、カーマイン。
「貴方の中のカーマイン様は、どれほど大事だったのですか?」
思わず、問いかけた。
この高慢な天使が、本気で怒る相手の事を知りたいと思った。
アドルファスはユーリスを睨み付けたまま、やがて諦めたように視線を外へと投げた。
「ただの友人だ。バカな、親友だった。
だが、あいつに悪戯を仕掛ける時が、怒って抗議するあいつをからかう時が、何より楽しかった。
そういう相手だったんだ」
「大事な人、だったんですね」
「そうでもない」
「貴方は案外、人間臭い顔をしますよ」
ユーリスの口振りに、アドルファスは明らかに嫌な顔をする。
だが、否定もしなかった。
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