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あたしはいつから
平気で嘘をつけるようになったんだろう?
拓ちゃんは誰よりも大切な人なのに。
後ろめたさと、
自分に対する憤りで、
胸が痛い。
言葉をひとつ放つたび、
心がどんどん黒く塗りつぶされていくような気がして。
込み上げてくる涙を堪え
ぎゅっと唇を噛んでいると、
拓ちゃんはいつもの笑みを浮かべて、
あたしの頭を優しく撫でてくれた。
「……うん。分かったよ」
指先が頬へと滑り降りてくる。
「そうか。里桜は子供扱いされるのが嫌だったのか」
心地良いはずの拓ちゃんの体温を頬に感じて、
堪えきれずあたしは俯いた。
いつもはあたしを安心させてくれる掌も、
今夜は胸の疼痛を酷くするばかりだ。
「あたし。お風呂に入ってくるね?」
いたたまれない空気から逃れるように
そう口にすると、
拓ちゃんは俯くあたしの頬を両手で挟んで上向かせて、
まるで瞳の奥まで覗き込むように見つめながら囁いた。
「あがったら僕の部屋へおいで?」
「……うん……」
ちょっとだけ声が強張ったことに、
拓ちゃんは気付いたかな?
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