《どうしてアタシだけ?》

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骨ばった指で椅子の肘掛を掴まれ、 ぐるりと90度回転させられて、 まぁつまり。 あからさまな嫌悪を湛える嫌味なほど整った顔を、 至近距離で見つめる形になったのです。   膝がぶつかるほど近くで 真正面から放たれる冷凍ビームを避けるべく、 ヒザ小僧に視線を落とすあたしの耳に、 はっきりそうと分かる不機嫌なため息が届いた。 「なあ。篠原」 「は……はい?」 「P検受けるんだって?」  P検?  パソコン検定?  えぇ受けますよ。 『それがなにか?』 と視線だけでそう問うたあたしに、 綾瀬は忌々しげな表情をオブラートに包む配慮もなく舌打ちをする。 「何でそれ俺に言わないの?」 「え? ええと……」 だって相談事なんか出来る雰囲気じゃないでしょう? あなた。 だから、あたしは担任の杉本先生に相談したのですよ? 「俺。おまえに【パソコン】を教えてる立場なんだけど?」 だいたい生徒に向って『おまえ』て、どうよ?
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