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「ミハル。ほら、見えてきたよ」
画面に映し出される蒼い惑星──『KB27』と操縦席に座る少年の故郷ではそう呼ばれる惑星が、あと数万キロ先に輝いている。
少年は画面下のパネルを馴れた手付きで操作する。決して少なくないボタンを正確に押し、パネル脇のマイクに向かって話し掛ける。
「キース、あれで間違いない?」
「マチガイ、アリマセン」
「そっか。このままの軌道だと、なんてところに着くの?」
「スコシ、オマチクダサイ」
ウィーン……ウィーン……
この宇宙船に搭載される電脳機械のキースが計算をする音が船内に響く。他に音といえばシューシューと空気の抜ける音だけ。
少年は手持ちぶさたに膝の上でトントンと指をタップさせ、キースの計算を待っていれば。
「ナナオ。ケイサンシュウリョウシマシタ」
「ありがと」
「トウチャクヨテイチハ“ニホン”」
「“ニホン”……か。解った。ミハル、聴いた? 僕らが行くの、ニホンってところだって!」
ナナオは椅子に腰掛けたまま、振り返って楽しげに笑った。
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