4人が本棚に入れています
本棚に追加
ナナオは故郷で行った祭りを思い出す。簡易式のお店ではロボットたちが物を売り、最新のゲームもお店で体験出来たりした。
売っている品物は違えども共通するのは賑やかな雰囲気。そして集まる人々の笑顔だ。
建物に音声の焦点を合わせると愉しげに笑い合う声が流れ、ナナオまで愉しくなってくる。
「あの布、なんて書いてあるのかな? 陸奥屋……りくおくや?」
建物の屋上から垂れ下がる白い布。書かれる文字は得た情報から読める。
「ムツヤ。ナナオ、ムツヤデス」
「むつや? あれでむつやって読むんだ。キース、一つ勉強になっちゃった! ありがと!」
無邪気に笑うナナオの顔は蒼白だ。額には玉の汗がいくつも浮かぶ。
「いいなぁ、いいなぁ。僕も行きたいな。ミハルもだよね? え? 急に降りたら驚いちゃうって? んー、でもちょっとだけ。いーじゃ……」
ナナオはまた発作的な息苦しさに襲われ激しく咳き込む。肺からヒューヒューと音がし、瞳も充血している。
清潔な布はさっきので最後。ナナオは汚れた口許を服の裾で拭い、掌はズボンに擦りつけた。
.
最初のコメントを投稿しよう!