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「うん、へーき。ミハルは心配性だな。あとちょっと……あとちょっとだけ見てようよ」
ナナオは椅子にぐったりともたれかかり、心地いい笑い声と画面上の光景に身を任せる。
どのくらいそうしていただろうか。街がネオンに彩られ、屋上はライトアップされる。
すると突然、爆音が空気を震わせ夜空に明かりが灯った。
ナナオたちと同じ目線に丸い火の花がパチパチ弾ける。
「す……すごいよ、ミハル! 見えた? あっ、また上がった! 花火だ! ミハル、花火だよ!」
ナナオは立ち上がって画面に食い入る。勢い良く上がった火の玉が星空に向かって花を咲かせ、最も美しい姿で人々を魅了し、儚く散っていく。
「たーまやー! って言うんだったよね? ん? それともむーつやーだったっけ? むーつやー!」
曖昧になっていく記憶。それでもナナオは最後の最後まで力いっぱい生きる。
あの花火のよう、命のかぎり残る全てを燃え上がらせた。
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