希望の星

8/10
前へ
/12ページ
次へ
「うん、へーき。ミハルは心配性だな。あとちょっと……あとちょっとだけ見てようよ」  ナナオは椅子にぐったりともたれかかり、心地いい笑い声と画面上の光景に身を任せる。  どのくらいそうしていただろうか。街がネオンに彩られ、屋上はライトアップされる。  すると突然、爆音が空気を震わせ夜空に明かりが灯った。  ナナオたちと同じ目線に丸い火の花がパチパチ弾ける。 「す……すごいよ、ミハル! 見えた? あっ、また上がった! 花火だ! ミハル、花火だよ!」  ナナオは立ち上がって画面に食い入る。勢い良く上がった火の玉が星空に向かって花を咲かせ、最も美しい姿で人々を魅了し、儚く散っていく。 「たーまやー! って言うんだったよね? ん? それともむーつやーだったっけ? むーつやー!」  曖昧になっていく記憶。それでもナナオは最後の最後まで力いっぱい生きる。  あの花火のよう、命のかぎり残る全てを燃え上がらせた。 .
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加