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最後の一発が打ち上がったとき、ナナオも力を使い果たしたかのようヨロヨロと操縦席の後ろに備えられている半透明のケースの脇に崩れ落ちる。
「ミハル。僕も時間切れみたいだ」
ナナオはミハルが眠るケースの2色あるボタンのうち青色のボタンを押す。ケースが開き、シューシューと鳴っていた音が消える。
ミハルの頬にそっと触れると異常に冷たく感じた。ナナオの体温が高いからだ。
ナナオが発症してからもう7日。ミハルも発症からちょうど7日で冷たくなった。
ナナオを蝕む未知のウイルスはたった数ヵ月でナナオたちの故郷を食いつくした。未曾有のバイオハザードに人々はなす術なく。父も母も仲のいい友人も……。
ミハルの頬に手を添えたまま、ナナオは反対側の頬に口づける。
「へへっ。チューしちゃった。怒らないでね、ミハル」
大好きなミハルの顔が霞み、ナナオはケースに頭をつけて瞼を閉じた。
「キース、あとお願いね……」
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