1章

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 九十九折りの緩い坂道を登りきると、小高い丘に近代的な建物が姿を現す。あたしの学校、北稜高校。  坂道の一番下に野球部のグラウンドはあった。あたしはいつものように坂道を少し登ったところのフェンスにもたれかかる。  ここからグラウンド全体を眺めることができる。  夏の蒸し暑さとは縁遠い爽やかな風が吹き抜ける。  ノックバットから発せられる音を聞くと今でもソワソワする。あたしってまだ野球がすきなんだって・・・。 「深山葵。」  フェンス越しに名前を呼ばれた。 「何?黒崎良太。」  良太はなぜかあたしのことをご丁寧にフルネームで呼ぶ。 「お前ヒマだろ?」 「立派な受験生を捕まえて『ヒマか?』って聞かないでよ!」 「そう言うのは真面目に勉強してるヤツが言うの。」 「真面目に勉強してるもん!」
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