1人が本棚に入れています
本棚に追加
発信音が1回鳴ると、すぐに相手が電話に出た。
「和樹君?」
女の声だった。
和樹は自分のことを名前で呼ぶ女を一人だけ知っていた。
「なんだ、一ノ瀬か」
電話の相手は和樹の中学時代の同級生――一ノ瀬麻衣だ。
麻衣はあまり目立たない存在の女子だった。
派手な容姿でもなく、
性格も大人しくひかえめであったが
なぜか目立つ女子グループの一員で
いつも学年で一番人気のあるギャルっぽい女子生徒達と行動していた。
和樹自身も、中学の頃から目立たない地味な存在で
陰では『オタク』と言われていたため
麻衣のグループからは絡まれることも無かった。
そのため、
和樹は麻衣のことを何も知らなかった。
ギャル生徒の取り巻きくらいにしか思っていなかったし、
中学を卒業したら関わることはもちろん、
会うことも無いと思っていた人物だ。
しかし、
思いもよらない再会を果たしたのは
高校に入学し、初めて夏休みを迎えた頃だった。
最初のコメントを投稿しよう!