思龍

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小十郎は、奥の棚から黒塗りの手桶を取りだし。 「では行って参る。」 「内藤様、よろしくお願いいたします。」 内藤小十郎は、小刀を腰にさし黒塗りの手桶を持って店を出て行く。 清水坂通りまでそう遠くないところで、小十郎は暇潰しのつもりで京を探索しながら音羽の滝へと向かった。 緑々と繁った楓の森へと石段を降りて行く。楓が色づくのはまだ先であろう、と小十郎は思いながら降る。 途中、石段に屈んでいるお女中を見かける。 何やら痛そうに足を擦っていた。 小十郎は、そんなお女中に声をかけると、 「あっ、そなたは…」 **
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