思龍

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「嘉納どの」 「どうしてわたくしの名を」 「それよりも、どうなされた」 「階段を踏み外しまして、どうやら挫いてしまったようです。」 小十郎は、嘉納葵を石段の隅に座らせて、挫いた足を見てやる。手のひらを足に触れるか触れないぐらいに翳す。 しばらくして、足が温かくなり、痛みが和らいでくるのであった。 嘉納葵は、この温もりはどこぞで感じた気がする。 と思っていた。 「いかがですか、痛みは治まりましたでしょうか?」 「はい、痛みは感じられません、」 「あっ、申し遅れましたが、わたしは内藤小十郎というものです。」 「あっはい、わたくしは嘉納葵と申します。」 「それでは、ここではなんですから、下の掛け茶屋に行きませんか?歩けますか」 「はい、大丈夫のようです。」 **
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